気候政策が一段と遅れれば経済成長の打撃に
IMF Blog, October 6, 2022
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- 気候政策が一段と遅れれば経済成長の打撃に
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- Authors: Benjamin Carton, Jean-Marc-Natal
- Published: October 6, 2022
概要
- 世界は、2050年までにカーボンニュトラルを実現するために、今後10年間で温室効果ガス排出量を少なくとも4分の1削減しなければならない。
- 移行に伴う短期的な経済コストは発生するが、気候変動を減速させることによる長期的利益に比べれば小さい。
- 気候変動政策の導入時期と信頼性が短期マクロ経済コストを左右する。遅延および不確実性はコストを増大させる。
モデルと前提
- 地域区分:国を中国、ユーロ圏、米国、世界のその他地域全体の4つに分けるモデルを使用。
- 目標:各地域が2030年までに25%の排出量削減を実現することを前提。
- 政策パッケージ:段階的に上昇する炭素税などの予算中立的な政策と、家計への給付・低排出技術への補助金・給与税の引き下げを併せて導入する設定。
- 実施期間の想定例:速やかに適切な措置が採られ、今後8年間にわたって段階的に実施するケースを想定。
主要な定量的所見
- 世界の経済成長:各地域がどれだけ速やかに化石燃料による火力発電から脱却するかに応じて、世界の経済成長は今から2030年まで年間で0.15%ポイントから0.25%ポイント鈍化する可能性がある。
- 地域別の平均影響(8年間の平均)
- 欧州と米国、中国に関しては、コストは平均で0.05%ポイントから0.20%ポイントと見込まれる。
- 化石燃料輸出国やエネルギー集約型の国のコストが最も大きく、世界のその他地域の数値を引き上げる。
- インフレ率の上昇幅は「ほとんどの地域」で0.1%から0.4%と穏やかである。
- 米国の事例:政策が「段階的で信頼性のあるもの」である場合、成長に対して年間0.1%の追加コストが発生するのみ。
- 遅延シナリオ(導入を2027年まで遅らせる場合)
- 金融政策が確かなものであり、脱炭素電源への移行が速やかである最も望ましい状況であっても、生産性-インフレのトレードオフは非常に大きく拡大する。
- GDPは1.5%下落し、インフレ率を目標に戻すためのベースラインを4年間下回ることになる。
- 2023年から2026年の間に累積した排出量をオフセットするため、より高い炭素税と急激な排出削減が必要になる。
- 2027年を超える遅れは、さらに急激な移行を要し、実質GDPに対してインフレ率を抑制するには相当なコストがかかる。後回しにすればするほどトレードオフは悪化する。
- 政策が部分的にしか信頼性がない場合、2030年までの再生可能エネルギーへの移行コストはおおよそ倍増するとの試算。
インフレ率と金融政策の結論
- 懸念:気候変動政策が中央銀行の業務を複雑化し、高インフレ環境で賃金-物価の悪循環を招くかどうかは政策当局者の喫緊の関心事である。
- 分析結果:気候変動緩和策の実施が段階的で確かなものであれば、家計と企業に移行の動機付けと猶予を与え、金融政策はインフレ期待の安定化が図られるよう適応すべきである。シミュレーションされた政策に関しては、コストは小さく、中央銀行にとってエネルギー価格の急騰を招く典型的な供給ショックに対応するよりも容易である。
- 信頼性の喪失:金融政策が信頼性を失うと、インフレ期待が不安定化し、生産性-インフレのトレードオフは拡大する。これが今日の高インフレ環境下での主要な懸念である。
- 政策設計の含意:補助金、フィーベートまたは給与税削減などと併せ、炭素税がインフレに及ぼす影響を抑制するように気候変動政策を設計することが示唆されている。
政策設計と推奨
- 段階的かつ信頼性のある導入が重要。段階的でかつ信頼性があればコストは低く抑えられる。
- 各国は資金や技術の面で協力を強化し、必要なノウハウを共有する必要がある。これは特に低所得国にとって重要。
- 政策当局者は、気候変動による潜在的な長期GDP損失を考慮すべきである。一部の推計では損失は桁違いに大きいとされる。
- インフレ率が低下するまで気候政策導入を待つという主張は、遅延がもたらす追加コストの観点から合理的でない可能性がある。遅延はより急速で高コストの移行を招く。
結論
- クリーンエネルギー経済への移行には短期的コストが伴うが、移行を遅らせればコストは大幅に増える。
- 速やかで段階的かつ信頼性ある政策設計と国際協力が、短期コストを抑えつつ脱炭素化目標を達成するために不可欠である。
本ブログは、2022年10月公表の「世界経済見通し」第3章「脱炭素政策の短期のマクロ経済的影響」に基づいている。 本章の著者は、メディ・ベナティヤ・アンダルッシ、ベンジャミン・カートン(共同リード)、クリストファー・エヴァンス、フロランス・ジョーモット、ダーク・ミュア、ジャンマルク・ナタル(共同リード)、オーガスタス・J.パントン、サイモン・ヴォイトである。